舞台は1963年の横浜。
海が見渡せる丘の上で、海という名の16歳の女子高生がひとり、コクリコ荘という下宿を切り盛りしていた。
海の事故で父を失った彼女は、毎朝、船の安全な航海を祈る信号旗を揚げるのが習慣だった。
通っていた高校に、文化部の部室として使われているカルチェラタンという名の洋風建築の建物があった。
学校では古いこの建物を新しくしようと考えていたが、学生たちは思い出の詰まったこの建物を残そうと動き出し、海もその活動に巻き込まれる。そこで海は新聞部の風間俊と運命の出逢いを果たすのだが。。。
→「コクリコ坂から」オフィシャルサイト
「コクリコ坂から」 映画予告
「5年で3本の映画を作る」ジブリ5ヶ年計画の2作目がこの「コクリコ坂から」。
ジブリの十八番であるファンタジーは一切なし。だけど、だけどこんな映画を待っていたのです。
シーンが進むたびに胸はときめき、あたたかいものがじんわりと心に沁みてゆく、
そんな素敵な物語にすっかり心を奪われてしまいました。
この映画はナウシカやラピュタや魔女宅を期待するようなファンタジーではありません。
あんまりカテゴライズしたくないのですが、どちらかというと「耳をすませば」系のような、
日常を切り取ったリアルストーリーです。
だけどリアルだからこその、共感できたり懐かしさを感じたり甘酸っぱい思いもしたり切なくなったりと、
そう、リアルな感情を揺さぶられるのです。
そして見終ったあとの爽快感。
単なる爽快ではない、ちょっぴり切なさを残しての、です。
そんな複雑な感情をもたらしてくれる映画はそうありません。
コクリコは素晴らしい映画だと思います。
そして、この映画を作ったスタッフにも素敵な物語が。
監督の宮崎吾朗は、いわずと知れた宮崎駿の息子。
父が企画と脚本を手がけ、それを息子が作るという、親子がタッグを組んで作った作品。
とはいえ、あの気難しい父の宮崎駿。そう簡単に息子を認めようとしません。
息子は父の呪縛から、逃れよう抜け出そう突き破ろうともがきにもがき、
命を削るように自分の極限にチャレンジして作り上げた作品。
息子の吾朗が初監督した「ゲド戦記」では酷評だった父の駿も、
コクリコ坂を試写で見たとき、プロデューサーの鈴木さんの横で隠すことなく泣いたそうです。
スクリーンで見た最初から、もうだめだと思いました。
何がって、これ絶対に良い映画だって、瞬時に感じたのです。
そう感じると、わけもなく泣けてくるわけで。それで、もうだめだ、と。
全部観なくても、そう感じる映画が3年に1本くらいでようやく出逢えるのですが、
まさにこの「コクリコ坂から」がそれでした。