喋々喃々

喋々喃々

東京は谷中にアンティークきもの店「ひめまつ屋」を営む、主人公の栞。
年の初めに、お茶会に着ていく着物がほしいという男性(春一郎)がやってくる。
ほんの些細な自然な流れでふたりは惹かれあうようになり、まるで季節とともにふたりの恋はゆっくりと育まれていく。
しかし、知っていても口には出せない、春一郎の左手の薬指に光る指輪。
そして、ずっと昔に別れた元カレへの特別な想い。栞の家族の複雑な関係。
ゆっくりと流れる時の中で起きる、小さく静かな物語。

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かたつむり食堂」に続く小川糸の第2弾作品。
ここでも小川糸の独特な「食」に対する細かい描写、そして切なく暖かい人間関係が描かれています。

しかし小川糸って人はなんてオシャレというか粋な人なんだろうと思いました。
「アンティークきもの」への着眼はもとより、随所に登場する生活の道具やら季節を示す花や歳時、そして「食」の描写。
やられた!と思ったのが、ひめまつ屋の定休日が「雨の日」という設定。
なんとも小粋ではないか。

「食」への描写は、前作「かたつむり食堂」を彷彿とさせるもので、食事へのこだわりはかなりあります。
デートのシーンでも、家族と食べるシーンでも、風邪をひいて食べる物でも、決して「食べた」で終わらすことなく、料理が出来るまでの過程、食卓に置かれたとき、食べ物を口までに運ぶまで、そして食べたとき。すべての工程で細やかな描写がされています。
食のシーンだけすごく説明的になるのですが、決して嫌味になっていないところもすごい。
自分は決して食べたことの無いはずの珍しい食事すら、文字を目で追うたびに料理のイメージができて、「味」すら感じることができるんです。

もちろん、着物のことも細かいところまで描かれています。
物の種類だけでなく、着物ではこういう動きが洋服と比べて良い悪いなど。本当に着ていないとわからないところまで。
読むと、本当に着物がほしくなるし、着たくなります。

物語の内容は、基本「恋愛」。でも不倫なんですな。
だけれど、「不倫」という言葉から想像できるドロドロとして醜い内容ではないんです。
決して不倫肯定派ではないですが、お互いを想う気持ちはとても純粋です。
その中で、昔付き合っていた元カレへの忘れられない想いも。
女性って、やっぱりどこか男性とは違う過去への考え方をするんだなって感じました。
そして、栞を取り巻く家族や近所の人たちとの人間模様も描かれています。

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